The Orthomolecular Times

2026.8.21 分子栄養学「エネルギーの通貨 “ATP” を支えるマグネシウム」

ヘルシーエイジング

分子栄養学「エネルギーの通貨 “ATP” を支えるマグネシウム」

ヒトは成長し、生命を維持するために食べ物からエネルギーを継続的に得る必要があります。

今回は、私たちの生命を支える『エネルギーの通貨 “ATP” 』の構造に不可欠なマグネシウムの役割について解説いたします。

ATPとは | 生命活動を支える“エネルギーの通貨”

私たちは毎日食事をします。

「何のため?」

・・そうです、日々入れ替わる体の新しい材料やエネルギーを確保するためです。

エネルギーは、起きて食事をする・考える・動く・分子レベルで体を新しく作り替える、あらゆる活動に使われています。エネルギーなくして、私たちの生存はありえません。

この生命活動を支えるエネルギーの代表が、

・ATP(アデノシン三リン酸)

と呼ばれる乾電池のような分子です。私たちは、ATPの中に貯めこんだエネルギーを使って生き、活動しています。

ATPは細胞内で作られ、体内のほぼすべての反応に使われる「エネルギーの通貨」と呼ばれています※1

ATPは、生きていると認められるいちばん小さな単位「細胞」の重要かつ主要なエネルギー源です※2

ヒトを含む生物は、成長し生命を維持するために、食べ物からエネルギーを継続的に得る必要があり、エネルギー産生栄養素(3大栄養素:糖質・脂質・タンパク質。以下、3大栄養素)の代謝によってATPが作られます。

なかでも適量の糖質と脂質は、心と体のエネルギー(カロリー)源となる重要な栄養素です※1

ATPの多くは、マグネシウムと結びついて機能する

マグネシウムイオン(Mg2+)は、細胞の中でカリウムイオン(K)に次いで多く存在するミネラルで、タンパク質やDNA・RNAの安定化※3、※4、※5など、体内のさまざまな重要な物質の正常な働きに関与しています※6。+

なかでも今回注目したいのが、ATPとの関係です。通常、細胞内のATPの多くは単独ではなく、マグネシウムとくっついた状態(複合体)(Mg-ATP)で存在し、利用されると考えられています※2、※12

マグネシウムは、ATPが作られる時にも分解される時にも、なくてはならない役割を果たします※6

つまり、私たちが体を動かしたり、頭を使ったりするたびに消費しているエネルギーの裏側には、常にマグネシウムの働きがあるといえます。

ATPはマグネシウムが結合することで反応しやすい形に変わります※7。マグネシウムは、人が必要とするエネルギー供給のために重要な必須ミネラルのひとつです。

エネルギー代謝を支えるマグネシウム

生命維持に必要なエネルギーを生み出すエネルギー代謝経路は、「解糖系」「クエン酸回路」「電子伝達系」という連続する3つの経路などで構成されています※1、※13

食事由来の3大栄養素は、これらの経路を通ってビタミンB群や鉄などさまざまな栄養素の助けを借りてATPへと変換されます。

マグネシウムは、300種類以上の酵素の”補因子”として機能します※8

エネルギー代謝経路において、解糖系で働く酵素(ヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、ピルビン酸キナーゼなど)は、マグネシウムを補因子として必要とします※9。またクエン酸回路・電子伝達系が円滑に動くためにも、マグネシウムが必須です※6

※エネルギーをつくるための必須栄養素「マグネシウム、ビタミンB群、CoQ10、鉄」

日本人のマグネシウム摂取状況 | 不足傾向と食生活のポイント

令和6年国民健康・栄養調査結果によると、日本人のマグネシウム摂取量は、食事摂取基準(2025年版)の推奨量に対し、成人男女とも全年齢層で不足しています※10、※11

不足幅は20〜40歳代の現役世代で(男性約110〜140mg、女性約80〜90mg不足)となり、70歳代では摂取量がやや増えて不足幅が縮小するものの※10、※11、毎日のマグネシウム摂取量を意識的に考える必要があります。

マグネシウムは、野菜・豆類・ナッツ・肉類・魚介類などの食品に含まれます。精製加工食品、ジャンクフードなどのファストフードなどの多い食生活では、一見健康な人でもマグネシウム不足に陥りやすいことが指摘されています※6

マグネシウムとカルシウムのバランスを意識し、※マグネシウムを多く含む食品を参考に、新鮮でバラエティ豊かな食材を取り入れたバランス良い食事を1日3回よく噛んでしっかり食べて、健康的に暑い夏を乗り切るヒントとしていきましょう。

※分子栄養学「食事の基本」

※1 Liu, H., et al. Energy metabolism in health and diseases. Signal Transduct Target Ther. 2025;10:69.

※2 Gout, E., et al. Interplay of Mg2+, ADP, and ATP in the cytosol and mitochondria: Unravelling the role of Mg2+ in cell respiration. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014;111(43):E4560–E4567.

※3 Hartwig, A., et al. Role of magnesium in genomic stability. Mutat Res. 2001;475(1-2):113-121.

※4 Misra, VK., et al. On the role of magnesium ions in RNA stability. Biopolymers. 1998;48(2-3):113-135.

※5 Petrov, AS., et al. Bidentate RNA–magnesium clamps: On the origin of the special role of magnesium in RNA folding. RNA. 2011;17(2):291-297.

※6 Fiorentini, D., et al. Magnesium: Biochemistry, Nutrition, Detection, and Social Impact of Diseases Linked to Its Deficiency. Nutrients. 2021;13(4):1136.

※7 Ko, YH., et al. Chemical mechanism of ATP synthase. Magnesium plays a pivotal role in formation of the transition state where ATP is synthesized from ADP and inorganic phosphate. J Biol Chem. 1999;274(41):28853-6.

※8 de Baaij, JHF., et al. Magnesium in man: implications for health and disease. Physiol Rev. 2015;95(1):1-46.

※9 Garfinkel, L., et al. Magnesium regulation of the glycolytic pathway and the enzymes involved. Magnesium. 1985;4(2-3):60-72.

※10 出典:「令和6年国民健康・栄養調査」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001603146.pdf)(2026年8月6日に利用)

※11 出典:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316468.pdf)(2026年8月6日に利用)

※12 Buelens, FP., et al. ATP–Magnesium Coordination: Protein Structure-Based Force Field Evaluation and Corrections. J Chem Theory Comput. 2021;17(3):1922-1930.

※13 激しい運動で酸素によるエネルギー供給が間に合わないときや、ミトコンドリアをもたない赤血球では、解糖系を使ってATPを供給します。
(※エネルギーのための「解糖系と乳酸とナイアシン・マグネシウム」分子栄養学的必須栄養素)

RECOMMEND

RELATED

PAGE TOP