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2026.4.17 分子栄養学「赤血球・ヘモグロビン・ヘムの関係とは?|酸素を全身に運ぶ細胞のしくみ」

ヘルシーエイジング

分子栄養学「赤血球・ヘモグロビン・ヘムの関係とは?|酸素を全身に運ぶ細胞のしくみ」

私たちが呼吸によって取り入れる酸素は、体内でエネルギーを作るために欠かせない物質です。

その酸素を全身に届けているのが「赤血球(せっけっきゅう)」です。

赤血球・ヘモグロビン・ヘムは、入れ子構造のように互いに深く関係し合い、酸素運搬という重要な役割を担っています。本記事では、この3つの関係を順番に、医師が解説いたします。

赤血球が酸素を運ぶ:エネルギー産生に不可欠なしくみ

私たちの体を構成するすべての細胞は、生きるためにエネルギーを必要としています。そのエネルギーを作り出すのに欠かせないのが「酸素」です。

酸素は、私たちが呼吸をすることで外気から肺に取り入れられます。では、肺に届いた酸素は、どのようにして全身の細胞へ運ばれるのでしょうか?

その中心的な役割を担うのが「赤血球」です。

赤血球は、血液の中で最も数が多い細胞です。血液1μL(1マイクロリットル:1mm×1mm×1mmの小さな四角の箱に入る量)の中に、約450~500万個もの赤血球が存在します。成熟した赤血球は、真ん中がくぼんだ「あんパン」のような円盤型をしています。

赤血球が血管を通って酸素を届けることで、1つひとつの細胞と、その中にある「ミトコンドリア」(細胞内にある小さなエネルギー発電所)で、ATP(アデノシン三リン酸:生命活動に使われるエネルギーの通貨)が効率よく作られます。
※エネルギーをつくるための必須栄養素「マグネシウム、ビタミンB群、CoQ10、鉄」


ヘモグロビンとは何か:赤血球の中の「酸素運び屋」タンパク質

赤血球の酸素運搬は、実際には赤血球の中に入っているヘモグロビンのはたらきによるものです。血液中の酸素のほとんどは、ヘモグロビンと結合した状態で全身に運ばれます※1

ヘモグロビンは赤血球中にのみ存在するタンパク質で、1個の赤血球全体の約 3分の1 の濃度を占めています。

ヘモグロビンは、合計4本のグロビンというタンパク質の鎖(ポリペプチド鎖)から成り立っています。4本のグロビンは、α(アルファ)鎖2本とβ(ベータ)鎖2本で構成され、4本で1つのタンパク質(ヘモグロビン)として働きます※2

そして各鎖は、鉄を含む「ヘム」と呼ばれる分子が1つずつ納まった構造をしています(図1)※2。つまり1分子のヘモグロビンは4つのヘムをもっています。


ヘムとは何か:鉄が酸素を運ぶ分子のしくみ

ヘムは、「プロトポルフィリン(protoporphyrin)」※3、※4と呼ばれる環っか状の化合物の中心に鉄(Fe²⁺)が1つ結合した分子です(図2)。このヘムに結合した鉄を「ヘム鉄」といいます。

酸素を運ぶ主体はヘモグロビンですが、実際に酸素をキャッチする役割を担っているのが、このヘムの中に納まっている鉄です※2。この鉄1つに対して1分子の酸素が結合できるため、4つのヘムをもつ1分子のヘモグロビンは、最大4分子の酸素を同時に運ぶことができます。


赤血球・ヘモグロビン・ヘムの入れ子構造:3つの関係のまとめ

ここまでを整理すると、赤血球・ヘモグロビン・ヘムの3つは、次のような「入れ子構造」になっています。

まず、血液の中を流れる「赤血球」があります。その赤血球の中に「ヘモグロビン」が詰まっており、1つずつのヘモグロビンの中に「ヘム」が4つ納まっています。そして最終的に、ヘムの中心にある「鉄(ヘム鉄)」1つが酸素1分子をキャッチします。


定期的な血液検査(金子メソッド)による貧血予防対策のススメ

健康な赤血球の寿命は約120日で、古くなった赤血球は壊され、毎日約2,000億個の新しい赤血球が産生されています※5

ヘモグロビンが減ることは、血液の酸素運搬能力が低下することを意味します。血液検査でヘモグロビン値が低下した状態は世界保健機関(WHO)により「貧血」と定義され、疲労感、頭痛、めまいなどの原因としてその予防対策が世界中で必要とされています※6

貧血にはヘモグロビンをつくる鉄欠乏が原因となる鉄欠乏性貧血のほか、ビタミンB12・葉酸不足によるものなど、たくさんの種類があります。また近年の研究では、ヘモグロビン値が正常でも鉄欠乏性貧血になる前の段階(貯蔵鉄が減少している状態)において、すでに体と心に深刻な影響が生じる可能性も報告されています※7、※8
※「なぜか疲れが取れない」原因は貯蔵鉄不足?

分子栄養学では、自己判断でやみくもに栄養素を摂るのではなく、血液データ解析に基づく個別化栄養療法(金子メソッド)により毎年1回の定期的な血液検査、必要に応じた消化管の検査などを実施し、個別具体的に必要な対策を見極めながらの貧血予防対策を行うことを推奨しています。

医師による客観的なモニタリングを通し、毎日のバランスの良い食事と良い生活習慣、良い腸内環境を保ち、効率的な赤血球産生を目指しましょう。
※金子メソッド(Kaneko’s method)とは?血液データ解析に基づく個別化栄養療法

※1 Kaufman, DP.,et al., Physiology, Oxyhemoglobin Dissociation Curve, in StatPearls. 2026; StatPearls Publishing.

※2 Marengo-Rowe, AJ. Structure-function relations of human hemoglobins. Proceedings (Baylor University. Medical Center). 2006;19(3):239-245.

※3 プロトポルフィリンはポルフィリンの一種で、ヘムの前駆物質です。プロトポルフィリンⅨともいいます。プロトポルフィリンⅨの中央に鉄が納まることで、ヘムが出来上がります。

※4 ポルフィリンとは、4個のピロールと呼ばれる窒素を1つ含む五員環化合物が、4個の炭素原子と結合した環状化合物の総称です。

※5 Muckenthaler, MU., et al.  A Red Carpet for Iron Metabolism. Cell. 2017;168(3):344-361.

※6 WHO. Haemoglobin Concentrations for the Diagnosis of Anaemia and Assessment of Severity. Vitamin and Mineral Nutrition Information System. Geneva: World Health Organization (WHO/NMH/NHD/MNM/11.1). 2011.

※7 Auerbach, M.,et al. Iron Deficiency in Adults: A Review. JAMA. 2025;333(20):1813-1823.

※8 Pasricha, R.,et al. Iron deficiency. Lancet. 2021;397(10270):233-248.

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