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2025.9.19 細胞の健康を支える!体液と電解質(でんかいしつ)の基礎知識

身体の仕組み

細胞の健康を支える!体液と電解質(でんかいしつ)の基礎知識

健康な毎日を送る上で、私たちの身体の中で目には見えないけれど非常に重要な役割を果たしているものがあります。それが、

・電解質(でんかいしつ)

です。電解質のバランスが崩れると、体調不良から深刻な病気までつながる可能性があります※1

今回は、

・体液の恒常性と電解質の関係

について、電解質と体液の基礎からわかりやすく解説いたします。

体液とは何か:私たちの身体を満たす生命の水

まず電解質を考えるうえで重要な、体液とは何かについて説明いたします。

健康で標準的な成人の場合、私たちの身体は体重の約60%が水分でできています。

この水分にはさまざまな物質(電解質や非電解質)が溶けており、この水分が体内を循環することで、体内の恒常性(ホメオスタシス)を維持するという非常に大切な役割を担っています。

この水分のことを、

・体液(たいえき)

といいます。

恒常性とは、身体の外部環境や内部環境が変化しても、身体の状態(体温、体液、血圧、血糖値、免疫など)を一定に保とうとする性質のことです。

体液は大きく下記の2つに分けられます。

・細胞内液(体重の約40%):細胞の中を満たしている水分
・細胞外液(体重の約20%):血液中の液体成分「血漿」(体重の約5%)、組織の中で細胞と細胞のすき間を満たす「間質液」など(体重の約15%)

私たちの身体を構成する細胞は、体液で満たされることで生きて機能を発揮します。そして体液の恒常性が維持されることで、細胞が正常に代謝を行い、正常に機能することが可能になります。

電解質の基礎知識

体液には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、クロール(塩素)などが含まれています。

電解質とは、水に溶けると
・陽イオン(正(プラス)の電荷をもつイオン)
・陰イオン(負(マイナス)の電荷をもつイオン)
となって電気を通す物質のことです。

体液に含まれるナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルは、水に溶けることで「イオン」になります。

体液に含まれる主要な電解質(イオン)とその働きには、以下があります※1

<細胞外液に多い>
●ナトリウムイオン(Na+):体液の量を調整する浸透圧の維持、神経や筋肉の機能※2、※3、※4
●カルシウムイオン(Ca2+):筋収縮に関与、細胞内情報伝達、血液凝固因子の活性化※2、※6
●塩化物イオン(Cl⁻):細胞外液の主要な陰イオン※3
●重炭酸イオン(HCO3):体液pHの調節  

<細胞内液に多い>
●カリウムイオン(K+):ナトリウムと協力して浸透圧の調整※2、※3、※4、※5、神経や筋肉の機能※2
●マグネシウムイオン(Mg2+):筋肉の正常な機能、酵素の活性化※2
●リン酸イオン(PO₄³⁻):エネルギー代謝に関与※1 など

これらの電解質が水に溶けてイオンとなり、それぞれ細胞膜を介して細胞内・細胞外に適度な濃度・バランスで存在することで、細胞が正常に機能することが可能になります。

細胞内外の電解質の分布:生命を支える絶妙なバランス

図1 細胞の内液と外液の電解質組成

私たちの身体は、何十兆個もの細胞からできています。

それぞれの細胞は薄い膜(細胞膜)で隔てられ、この細胞膜をはさんで、細胞の内側と外側で電解質の濃度が大きく異なります(図1)。

体液の電解質バランスが細胞内液と細胞外液で全く違うのは、電解質の移動が細胞膜によって制御されているからです。

細胞膜は脂質(リン脂質二重層)でできており、電解質や水はタンパク質でできた通り道(チャネルなど)を通して出入りする必要があります※4

電解質バランスが健康に与える影響|恒常性維持の重要性

もし細胞外液の電解質濃度が高すぎると、細胞内の水分が外へ引き出され、細胞はしぼんでしまいます。

逆に細胞外液の電解質濃度が低すぎると、水分が細胞内に流れ込みすぎて細胞は膨張し、最悪の場合は破裂してしまうこともあります。

電解質は体内の水分バランスを適切に調整し、pHや浸透圧などを調節して細胞を健康に保ち、私たちの生命の根底を支える重要な役割をしています。

バランスの良い食事で電解質を補給!健康な身体を維持する秘訣

電解質のバランスは、私たちの生命活動そのものを支えています。

・神経が情報を伝える
・筋肉が動く
・心臓が規則正しく拍動する

なども、すべて電解質が適切な濃度で存在し、細胞内外のバランスが保たれているからこそ可能になります※4

※ナトリウムとカリウムの秘密 – 神経細胞の生命を支える電解質の重要性

体内では、そんな大切な体液の恒常性を維持するために、腎臓が中心となってせっせと働いています。

※食事の基本
※カリウムを多く含む食品
※マグネシウムを多く含む食品
※カルシウムを多く含む食品

を参考に、適切な水分と1日3食バランスの良い食事を摂る※1ことで身体の恒常性を保ち、イキイキとした毎日を送るヒントとしていきましょう。

※1 Shrimanker, I.,et al. Electrolytes. In StatPearls. StatPearls Publishing. Updated July 24, 2023. Accessed September 12, 2025.  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK541123/

※2 Jomova, K.,et al. Essential metals in health and disease. Chemico-Biological Interactions. 2022; 367:110173.

※3 Wright, SH. Generation of resting membrane potential. Advances in Physiology Education. 2004;28(1-4):139–142.

※4 Steven, M.,et al. Physiology, Resting Potential. In StatPearls. StatPearls Publishing. Updated April 10, 2023. Accessed September 12, 2025. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK538338/

※5 Staruschenko, A. Beneficial Effects of High Potassium: Contribution of Renal Basolateral K+ Channels. Hypertension. 2018;71(6):1015–1022.

※6 Brini, M.,et al. Calcium in Health and Disease, Interrelation between Essential Metal Ions and Human Diseases. Metal Ions in Life Sciences. 2013;13:81–137.

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