2026.1.16 分子栄養学「金子メソッド(Kaneko’s method)とは?血液データ解析に基づく個別化栄養療法」
分子栄養学「金子メソッド(Kaneko’s method)とは?血液データ解析に基づく個別化栄養療法」

新年明けましておめでとうございます。
分子栄養学タイムズは、今年も皆さまの健康管理に役立てられる情報を、さまざまな文献に基づいてご紹介いたします。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
金子メソッド(Kaneko’s method):血液データ解析に基づく個別化栄養療法
2021年、分子栄養学※1に基づく栄養療法について、『倦怠感患者に対する血液データ解析に基づく個別化栄養療法』という論文が発表されました※2。
この研究では、倦怠感を訴える患者さん(253名)に分子栄養学独自の手法である「血液データ解析に基づく個別化栄養療法」を実施・評価した結果、そのほとんどが慢性症状や疾患予備軍の状態から回復したことが報告されています※2。
そしてこの論文の中で、この新しい「血液データ解析に基づく個別化栄養療法」が、
・金子メソッド(Kaneko’s Method:金子法。以下、金子メソッド)
として発表されています※2。
金子メソッドとは

ここで「金子メソッド」とは何か、具体的に一緒に見ていきましょう。
金子メソッドとは、オーソモレキュラー分子栄養医学協会が提案する、分子栄養学に基づく栄養療法に用いられる方法です。
金子メソッドは、健康維持のために「単に栄養素を補給する」のではありません。医師が血液検査を詳細に分析し、その人だけに合わせたサプリメント処方や食事のアドバイスを行う「個別化栄養療法」、栄養療法の新しい実践的方法であることが報告されています※2。
(※分子栄養学とは⑥「個体差を重要性する理由:誰一人同じ身体の人間はいない」 )
金子メソッドにおいて行われる血液データ分析方法は分子栄養学独自のもので、主に患者さんの「酵素活性や代謝の低下を検出」するために使用されます※2。またさらに重要なことは、栄養療法をモニターし、栄養素の摂取量を適正にするために使用されていることです※2。
35万件以上のデータから導き出された最適範囲:金子博士の発見

金子メソッドにて用いられる血液検査項目の体系化を行ったのが、分子栄養学の国内普及に尽力した金子雅俊博士(1935~2020)です※2。
この新しい栄養療法(金子メソッド)では、金子博士によって35万件以上の血液データを分析し決定された
・血液検査の最適範囲(理想的な標準値)(the optimal range (ideal standard values) for blood examination)
を用います※2。
金子博士は、血液検査の最適範囲からわずかにずれていることが多様な栄養素欠乏を診断するために使用でき、また特定の血液データの組み合わせが特定の臓器の働きの低下を示すことを発見しました※2。そして原因のわからない倦怠感などの症状が、金子博士の定義した血液データが示す最適範囲に従った栄養素で治療できる可能性が、文献の中で報告されています※2。
血液検査データから栄養素欠乏を読み解く例:酵素「ASTとALT」

例えば、血液検査データから栄養素欠乏を読み解く例として「ASTとALT」という酵素について考えてみましょう。
・AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)
・ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)
ASTは肝臓や心筋・骨格筋、赤血球など、ALTは主に肝臓に存在します。
一般の保険診療におけるASTとALTは、主に肝臓の機能を評価するための代表的な項目として扱われます。肝臓の病気のほか、ASTのみが上昇している場合は心筋梗塞や筋肉の疾患などにも注意を払う必要があり、病気の診断や治療経過の指標などとして用いられます。
一方、分子栄養学では、上記に加え、これらの酵素の代謝経路における役割、関わる栄養素についても重要視します。
ASTとALTは、生命活動にとっての必須栄養素「タンパク質」の最小単位であるアミノ酸代謝に関与する不可欠な酵素です。そしてASTとALTが働くために、ビタミンB6を補酵素として必要とします。
ここからどのように栄養状態を解釈するかというと、まずビタミンB6欠乏状態がASTとALT低値を示す際の一因であるとする文献が存在します※3、※4。
また例えば、AST<ALTは脂肪肝※5でも起こり、脂肪肝はタンパク質不足で起こる可能性を報告した文献も存在します※6。
金子メソッドでは、医師が詳細な問診を通した健康状態や他の検査項目を照らし合わせ、血液データを分子栄養学的解釈を用いて読み込み、詳細な一人ひとりの身体の状態、個体差に合った栄養素補給を行う手段として用います。
驚いたことに、この論文の著者たちが知る限り、血液化学検査データから推定される栄養素欠乏の検出を報告した研究は世界初であると報告されています※2。
金子メソッド:未病を救う可能性を秘めた栄養療法
” Orthomolecular(オーソモレキュラー)” は、ライナス・ポーリング(L. Pauling)博士が1968年の論文の中で提唱したことから始まっています※7、※8。
・ortho:正しい(ギリシャ語)
・molecule:分子(英語)
という意味の2つの単語を組み合わせた造語であり、オーソモレキュラーは文字通り、「正しい分子」を意味します※7。
栄養素という分子で構成された細胞の集合体、それが私たちです。
新しい1年を健やかに過ごすために、まずは自分の身体の状態を「金子メソッド」という客観的な物差しで測り、健康維持への第一歩を踏み出してみませんか。
金子メソッドは、倦怠感など未病の状態に悩む多くの無症候性・未診断の患者さんを救う可能性を秘めた、新しい栄養療法です※2。
※1 当サイト(分子栄養学タイムズ)内の記事においては、「オーソモレキュラー分子栄養医学」に代わり「分子栄養学」の名称を用いています。(※分子栄養学とは①)
※2 Arakaki, M.,et al. Personalized Nutritional Therapy Based on Blood Data Analysis for Malaise Patients. Nutrients. 2021; 13(10): 3641.
※3 Ramaiah, SK. A toxicologist guide to the diagnostic interpretation of hepatic biochemical parameters. Food and Chemical Toxicology. 2007;45(9):1551-1557.
※4 Ono, K.,et al. The pathogenesis of decreased aspartate aminotransferase and alanine aminotransferase activity in the plasma of hemodialysis patients: the role of vitamin B6 deficiency. Clinical Nephrology. 1995; 43(6):405-408.
※5 2024年8月に新しく定義された「脂肪性肝疾患(SLD)」は、以前、「脂肪肝(fatty liver)」と呼んでいた状態とほぼ同じです。
※6 豊島 由香ほか「タンパク質栄養状態悪化による肝脂肪蓄積の機構」 Journal of Japanese Biochemical Society. 2021;93(1): 35-42.
※7 Carter, S. Orthomolecular Medicine. Integrative Medicine: A Clinician's Journal. 2019;18(3):74.
※8 Pauling, L. Orthomolecular psychiatry. Science, 1968;160(3825):265-271.