The Orthomolecular Times

2025.7.7 分子栄養学の食事「マグネシウムを多く含む食品」

腸内環境

食物繊維って何?感染症に打ち勝つ分子栄養学的免疫対策の秘策

今秋は、夏から続いて季節外れのインフルエンザなど感染症の流行が懸念されています。

今回は感染症に打ち勝つための免疫を支える影の立役者、

・食物繊維

のお話です。

分子栄養学では、達成可能な摂取量として最低1日20g以上の毎日の積極的な食物繊維の摂取をお勧めしています※5※食事の基本)。

豊富な水溶性食物繊維の摂取が、インフルエンザによる感染を抑制する?

マウスの実験において、水溶性食物繊維の摂取がビフィズス菌など有用菌の勢力を刺激して腸内細菌叢のバランスを大きく変化させたことが報告されています。

そしてそれによって腸内の短鎖脂肪酸(酪酸、プロピオン酸、酢酸)が増え、その短鎖脂肪酸が宿主※2の免疫システムを強化し、インフルエンザ感染に対して抵抗性を獲得するということが示されています※1

この研究では「水溶性食物繊維をしっかり摂取すること」が、感染によって生体内の組織を破壊する※3過剰な自然免疫の反応を抑制し、さらにインフルエンザに特異的な獲得免疫を強化することが明らかになりました※1

※免疫を司る白血球「白血球の仲間たちの基礎」

食事する際「食物繊維」を一緒に摂取することが身体を守る免疫につながる

食物繊維が足りないと、腸管のバリア機能が低下します。

腸管バリア機能が低下するということは、感染症などに罹りやすくなってしまうということです。豊富な量とさまざまな種類の食物繊維は有用菌のエサとなります。

有用菌が腸の中にしっかりいてくれることが腸内細菌叢のバランスが整うことにつながり、全身の免疫対策につながります。

※分子栄養学的リーキーガット症候群対策①

多様な食事は多様な腸内細菌叢を育む秘訣です

たくさんの種類の腸内細菌叢。

同じ食材ばかりでなく、多様な食事、いろいろな食材を食べるほど腸内細菌の多様性が保たれ、病原性をもった菌が少ないことが示されています※4

そのため、同じ研究報告において、健康を保つために常に多様な食材を食べ続ける必要があることも指摘されています。ぜひバラエティに富んだ食事をよく噛んで食べましょう。

食物繊維は第6の栄養素と呼ばれる

食物繊維は身体には吸収されませんが、健康な身体づくりにとって必要不可欠なさまざまな働きがあり、かけがえのないものであることがわかってきています。

そこで食物繊維は5大栄養素(※5大栄養素(概論))に続く「第6の栄養素」とも呼ばれます。

食物繊維はプレバイオティクスのひとつ

プロバイオティクスとプレバイオティクスを一緒に摂る

・シンバイオティクス

が免疫の要、腸を整える方法として注目されています。

食物繊維は、プレバイオティクスのひとつです。プレバイオティクスは、難消化性オリゴ糖、食物繊維のことを指しています。

食物繊維は消化酵素で消化できない炭水化物のこと

食物繊維は、栄養学では炭水化物に分類されています。

炭水化物とは、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)の3つの元素でできた成分です。そのうちヒトの消化酵素で消化できるもののことを「糖質」、ヒトの消化酵素で消化できない炭水化物を「食物繊維」と呼んでいます。

食物繊維は、小腸で消化されずに小腸をそのまま通り過ぎ、大腸まで到達します。

※栄養アプローチに欠かせない!最初のステップ「消化と吸収」

食物繊維には水溶性と不溶性がある

食物繊維は、

・水溶性食物繊維
・不溶性食物繊維

の2つに分けて考えられています。水溶性食物繊維は不溶性食物繊維に比べて食品に含まれる量が少ないため、十分に意識して摂る必要があります。

①水溶性食物繊維とは

水溶性食物繊維は「水に溶けやすい食物繊維」として分類されています。便を柔らかくしてするっと出るお手伝いをしてくれ、血糖値の急上昇を抑えるなどの効果が知られています。

水溶性食物繊維は腸内細菌のエサとなって発酵されやすく、短鎖脂肪酸(酪酸、酢酸、プロピオン酸)を増やします。短鎖脂肪酸は腸内を酸性に保つことで、有用菌がすみやすい環境を整えます。

②不溶性食物繊維とは

不溶性食物繊維は「水に溶けにくい食物繊維」として分類されています。腸などで水分を吸収してふくらみ、便のカサを増します。腸管の蠕動運動を促す効果があります。

不溶性食物繊維は、ストレスなどで便秘がちの人が摂ると、便秘が悪化したり便が硬くなったりする場合があります。おなかに不安のある方は、担当医にご相談ください。

③水溶性食物繊維、不溶性食物繊維を多く含む食品

水溶性食物繊維、不溶性食物繊維を多く含む食品は以下のようになります。

種類多く含む食品
水溶性食物繊維わかめ・がごめ昆布・もずくなど海藻※5、寒天※5、納豆、
きな粉、オクラ、モロヘイヤ、ごぼう、かんぴょう、もち麦、オートミール、アボカド、ココア、なめこなど
不溶性食物繊維野菜、大豆、いも類、穀類、小麦ふすま、ココア、きのこ、種実類など

食物繊維は身体の大切なお便り「便」の強い味方

腸は栄養素の吸収の場であり、人体最大の免疫器官です。そしてそれを助けてくれるのが食物繊維です。

自分の腸の状態を知るには、医師のもとで行うさまざまな検査(短鎖脂肪酸検査、SIBO検査、リーキーガット検査など)がありますが、ご家庭で簡単に腸の状態を知る方法が毎日出る便の状態を観察することです。

※子供の栄養「腸は全身をコントロールする第2の脳」

有用菌のエサとなる水溶性食物繊維を意識して、食物繊維をよく噛んでたっぷり食べましょう。

ストレス対策、適度な運動、オメガ3脂肪酸も腸内環境を整えます(※分子栄養学的リーキーガット症候群対策②(生活習慣・栄養素対策編))。

秋の味覚を楽しみながら、食物繊維の力で感染症知らずの身体づくりを目指しましょう。

※1 Trompette A.,et al. Dietary Fiber Confers Protection against Flu by Shaping Ly6c- Patrolling Monocyte Hematopoiesis and CD8+ T Cell Metabolism. Immunity, 48(5):992-1005.e8.(2018)

※2 宿主とは
感染を受ける側の動物や植物を宿主(しゅくしゅ)といいます。

※3 感染とは
感染とは、病原体が身体の中に入ってきて、それが定着して増えることです。病原体の感染力が私たちの抵抗力(免疫)を上回る場合に成立します。感染力より免疫が上回る場合は、保菌者でも無症状である場合もあります。病原体が細胞や組織に入り込んで感染は成立しているけれども、ある程度まで免疫が抑え込むことができていているということです。病原体が増えてしまうと、ものによって毒素を出したり、私たちの細胞や細胞が集まった組織や器官などを壊したりして、身体を正常に機能することができなくなってしまいます。(※感染と免疫の仕組みを知ろう「感染と免疫の基本」)

※4  Xueran Huang X., Dietary variety relates to gut microbiota diversity and abundance in humans. European Journal of Nutrition, 61(8):3915-3928.(2022)

※5 食物繊維は、過敏性腸症候群、SIBOなど病態によって摂り方が変わる場合があります。また、甲状腺機能低下症の方は、海藻などの摂り方が変わる場合があります。

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