分子栄養学の栄養素「春の紫外線から目と皮ふ(肌)を守る栄養素」


日本では、春を迎えると紫外線が急激に強まります。長年浴び続ける紫外線は、私たちの目や皮ふ(肌)に大きな悪影響を与えます。
・春の紫外線量はどのくらい?
・紫外線から目と皮ふ(肌)を守る栄養素
について一緒に見ていきましょう。
春の紫外線から皮ふ(肌)と目を守る!

3月から5月にかけては気温がまだ低いため、紫外線対策を油断しがちではありませんか?
しかし日本では、春を迎えると紫外線が急激に強まります。
適度な直射日光による紫外線(UVB)は、健康維持に重要なビタミンD3の生成に必要です※1。
(※紫外線対策はビタミンD補給も一緒に)
しかし過剰な紫外線は皮ふの老化や日焼けだけでなく、体内で「酸化ストレス」という状態を引き起こします。そしてその酸化ストレスが、老化やさまざまな病気のリスクを引き起こす原因のひとつとして考えられています。
紫外線を浴び続けると、人体には下記のような影響が出ることが示唆されています。
・目(角膜病変、白内障、緑内障、加齢性黄斑変性、がんなど)※2
・皮ふ(しみ、しわ、たるみ、がんなど)※1、※3
まだまだ寒い日の多い3月は、紫外線について油断している方も多いことでしょう。 しかしUVインデックスを見てみると、紫外線対策が必要な日々が続いていることがわかります。
紫外線から身を守るための指標、UVインデックス
私たちが日常の中で毎日の紫外線量を参考にできる指標が、環境省・気象庁が発表しているUVインデックスです。
UVインデックスは、紫外線(UVA、UVB)が総合的に人に及ぼす影響、皮ふに赤い日焼けを生じさせる紫外線の量(紅斑紫外線量)として計算されています※4。
UVインデックスは、紫外線による健康障害を防ぐためにWHO(World Health Organization:世界保健機関)が推奨する世界共通の指標です※5。
・UVインデックス3以上
で日焼け止めの使用が勧められています。環境省ではUVインデックス3~7は「日中は出来るだけ日陰を利用しよう。出来るだけ長袖シャツ、日焼け止め、帽子を利用しよう」と呼びかけています。
(※秋の分子栄養学的紫外線対策のススメ①)
日最大UVインデックスの年間推移グラフ(茨城県つくば)

上図は、気象庁発表2024年「日最大UVインデックスの年間推移グラフ(観測所:茨城県つくば)」です※6。「●は観測値、細実線は1990年から2024年までの累年平均値を表しています。」※6
上図より、3月にはすでに紫外線対策として日焼け止めの使用が推奨されている
・UVインデックス3以上(黄色の部分)
の日が多いことがわかります。そしてこれから8月にかけて、毎月紫外線の強い日が増え続けることがわかります。
日本全国の春の紫外線量(2024年3月の月平均値)
気象庁発表の2024年3月における代表的な日本各地の日最大UVインデックス(月平均値)は、以下のようになります※7。
・札幌(2.1)
・秋田(2.2)
・仙台(2.5)
・福島(2.5)
・東京(3.0)
・金沢(2.5)
・名古屋(3.1)
・京都(3.0)
・広島(3.1)
・福岡(3.3)
・那覇(5.6)
上記より、3月は日本の各地で紫外線対策が必要な日々がすでに始まっていることがわかります。
気象庁ホームページ(https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/uvindex/uvtrans.html?elementCode=0&areaCode=6&placeCode=47)では、日本全国各地の毎日朝6時~夕方18時までの1時間毎のUVインデックス予報を確認することができます。紫外線から身を守る手段のひとつとしてご参照ください。
UVインデックスは、目を紫外線から守る指標としては不十分だとする意見もあります※8。
紫外線UVAは1年間を通して降り注ぐため、分子栄養学では、年間を通した適切な紫外線対策をお勧めしています。
紫外線が引き起こす酸化ストレスとは?

酸化ストレスとは、体内で発生する「活性酸素」という物質が増えすぎた状態です。活性酸素は身体を守るために本来必要なものですが、紫外線などの刺激で過剰に発生すると、細胞を傷つけてしまいます。
酸化とは何かを説明する際、よく使われるのが「サビ(錆び)」という言葉です。例えばリンゴを切って空気にさらしておくと茶色くなります。あれが「サビ」つまり「酸化」の一例です。
春は外出して活動量が増える季節でもあります。紫外線量も急増するため、適切な栄養素を摂ることで内側からの紫外線対策も実践していきましょう。
(※紫外線が起こす酸化ストレスって何?)
分子栄養学の身体の内側からの紫外線対策:抗酸化栄養素
①ビタミンC
紫外線対策の定番栄養素です。抗酸化作用があり、活性酸素を消去します。
②ビタミンE
脂溶性ビタミンで、細胞膜を守る働きがあります。ビタミンCと一緒に摂ることで相乗効果が期待されます。また脂質と一緒に摂ることで吸収率が高まります。
(※皮ふには抗酸化物質ビタミンC、ビタミンEが存在する)
③抗酸化酵素の補因子(鉄、亜鉛、マンガン、セレン、ビタミンB2)
皮ふのもつ抗酸化能力のうち、抗酸化酵素がはたらくための補因子(cofactor)として
・鉄、亜鉛、マンガン、セレン、ビタミンB2
が必要です。これらの栄養素は、以下の抗酸化酵素の補因子として働きます。
・スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)
・SOD1(銅 / 亜鉛)
・SOD2(マンガン)
・SOD3(銅 / 亜鉛)
・カタラーゼ(鉄)
・グルタチオンペルオキシダーゼ(セレン)
・グルタチオンレダクターゼ(ビタミンB2、ナイアシン)
活性酸素やフリーラジカルの増加は、身体の中にある抗酸化能力の低下が原因であることも一緒に報告されています。例えば皮ふのもつ抗酸化能力は加齢とともに低下し※3、※9、老化した皮ふは紫外線にさらに弱くなることが示されています※3、※9。
また目の健康を守るために、ビタミンC、ビタミンE、グルタチオンなどの抗酸化ネットワークが水晶体を守り、白内障を防ぐ可能性が報告されています※10。もともと目の構造(房水、水晶体)にはビタミンCなどが含まれていて、抗酸化栄養素として働いていると考えられています※11、※12。
人生100年時代。目と皮ふを紫外線から守り続けるためにも、分子栄養学実践医師のモニタリングのもと、ビタミン・ミネラルをしっかり補給し健康を守りましょう。
(※分子栄養学の皮ふ(肌)の抗酸化栄養素①)
今回のまとめ
春は紫外線が急激に増える季節です。
紫外線量は季節(春夏秋冬)、時刻、地域、緯度などによっても変化します。
紫外線対策は外側からの対策(日焼け止めや帽子、日傘、サングラスなど)に加え、内側からの対策、つまり食事による栄養素の摂取も同じくらい大切です。
分子栄養学実践医師のモニタリングのもと、日々の食事に栄養素(ビタミン(B群、C、E)、鉄、亜鉛、マンガン、セレン)を上手に取り入れ、目と皮ふの健康維持に役立てましょう。
※1 Young, AR.,et al. (2017). Ultraviolet radiation and the skin: Photobiology and sunscreen photoprotection. Journal of the American Academy of Dermatology, 76(3S1), S100-S109.
※2 Ivanov, IV.,et al. (2018). Ultraviolet radiation oxidative stress affects eye health. Journal of Biophotonics, 11(7), e201700377.
※3 Papaccio, F.,et al. (2022). Focus on the Contribution of Oxidative Stress in Skin Aging. Antioxidants, 11(6), 1121.
※4 出典:気象庁ホームページ(https://www.data.jma.go.jp/env/uvhp/3-51uvindex_define.html#:~:text=%E7%B4%85%E6%96%91%E7%B4%AB%E5%A4%96%E7%B7%9A%E9%87%8F%E3%82%92%E3%80%81%E6%97%A5%E5%B8%B8,%E5%AE%9A%E7%BE%A9%E5%BC%8F%E3%82%92%E7%A4%BA%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99%EF%BC%89%E3%80%82)を編集して文章を作成。
※5 Fioletov, V.,et al. (2010). The UV index: definition, distribution and factors affecting it. Canadian Journal of Public Health, 101(4), I5–I19.
※6 出典:気象庁ホームページ(https://www.data.jma.go.jp/env/uvhp/link_daily_uvindex_obs.html)(2025年2月25日に利用)
※7 出典:気象庁ホームページ(https://www.data.jma.go.jp/env/uvhp/link_uvindex_month54.html)(2025年2月20日に利用)
※8 Hatsusaka, N.,et al. (2021). UV Index Does Not Predict Ocular Ultraviolet Exposure. Translational Vision Science and Technology. 10(7), 1.
※9 Poljšak, B.,et al. (2012). Free radicals and extrinsic skin aging. Dermatology Research and Practice, 2012, 135206.
※10 Lim, JC.,et al. (2020). Vitamin C and the Lens: New Insights into Delaying the Onset of Cataract. Nutrients, 12(10), 3142.
※11 Reddy, VN.,et al. (1998). The effect of aqueous humor ascorbate on ultraviolet-B-induced DNA damage in lens epithelium. Investigative Ophthalmology and Visual Science, 39(2), 344-350.
※12 Blondin, J.,et al. (1986). Delay of UV-induced eye lens protein damage in guinea pigs by dietary ascorbate. Free Radical Biology and Medicine, 2(4), 275-281.